でも。


「行くぞ!はい」


そう俺は左手を星蘭に差し出した。


「はぐれないように。迷子避け」


「ふふっ」


「な、なんだよ!」


「直樹照れてる」


「う、うるさい!行くぞ」


俺は自分から星蘭の手をとり歩き出した。


夏に手を繋いだら暑いと思っていたが、この温もりが心地好くて。


安堵を誘う。


この人混みの中、花火大会の会場へとなだれ込んでいく。


俺たちは、ずっと無言のまま。


手を繋いだだけで何かわかるかのように。


ただ。


ただただ、手を繋ぎながら歩き続けた。