たわいもない話をしていると、すぐに駅に着いた。


「定期定期っと―…」


私が鞄の中を探り始めるころ。


「悪いけど、先に帰っといてくれる?」


顔の前で手を立てて申し訳なさそうに謝る莉子。


「あ、うん!用事?」


「あー…うん、用事。ちょっと買いたいものがあってね!」


「買い物だったら付き合うよー」


と繁華街のほうへ足を進めようとしたが。


「い、いいよーっ!遅くなったら困るし!」


「え!?ちょっ…」


早く帰って神谷くんに連絡してあげなさい、といいながら私の背中をくるりと駅に向け押し進める。


「また明日ね、星蘭」


「うん、気をつけてね。遅くならないようにー!」


「星蘭は私のママか!うん、じゃあ」


私は歩いていく莉子に手を振った。


さあ、帰ろう。


鞄から探しだした定期を改札口に通す。


キス恐怖症の原因がわかった。


さて。


これからどうしようか。


言いたいけど言いたくない。


矛盾だらけ。


でも言わないと、直樹の恋が始められない。


もう。


――…なのかな?


「…潮時…なのかな」


私はそう小さく呟き、肩を落とした。