― 星蘭 side ―


さっきの一件から顔を冷まし、ちょうど落ち着いた頃。


自販機から帰ってくる直樹が見えた。


両手に缶ジュースを持ちながら人混みの中を颯爽と歩いてくる。


そして。


「お待たせ」


そういいながら、私にジュースを差し出す。


「ありがとう」


私が直樹に微笑みかけると、思っていたより自然な笑顔が帰ってきた。


――ああ、また安心感。


熱くなるんじゃない。


ほんのり温かい気分。


ぎくしゃくしていたついさっきとは違い、深く考えることはなかったみたい。


「ねえ、次何乗る?入場料払ってるわけだし遊びつくさないともったいないでしょ!」


「だよな。さっき何乗ったんだ?」


「えっと…コーヒーカップにジェットコースターかな」


そうだ……気持ち悪くなった原因。


「観覧車乗ったし―…」


「うーん…色々あるんだけど―…」


悩んだ結果。


閉園まで、すべての乗り物を片っ端から乗りつくすことになり。


メリーゴーランドから急流滑りまで。


観覧車のキスなんか思い出させないぐらい。


二人っきりで遊園地を思いっきり満喫した私たちだった。