私は無言で直樹の横顔を見つめていた。


しばらくお互い無言が続く。


その間に観覧車は動き続け、頂上へと差し掛かってきたころ。


「あのさ―…」


先に口を開いたのは、直樹だった。


私は、風景のことなど忘れて、頭は直樹のことで埋まっていた。


「星蘭は……好きな人いるか?」


「え!?」


予想外の質問で、聞き返すように驚くと共に、頬が熱くなるのを感じ、視線を足元に戻した。


好きな人―…。


「別に好きな人じゃなくても、大切な人とか」


私とは逆に、なんだか落ち着いている直樹。


そのギャップがまた恥ずかしかったりする。


「俺はいるよ、大切な人も好きな人も」


――ズキッ


"好きな人も"


私はこの言葉に、胸の痛みを覚えた。


私か好きな人に、好きな人がいる。


久々の恋で免疫のない私にとって。


この事実は、痛く胸が疼き、息がつまるものであった。