「見つけた…っ…」


息を切らして走ってきた彼こそ。


「…げ、兄貴…」


「見つけるの早いよーっ」


そう。


「直樹…っ!」


まさしく、私が好きな神谷直樹だった。


まだ距離はあったけど。


それでも直樹だということは、しっかりと確認できた。


これで助かった。


と、思ったのは束の間で。


「春ちゃん、逃げるよ!」


「ラジャー!はい!星蘭さんも一緒に逃げるよー」


「えっ…ちょっと!」


私は春樹くんに手を引っ張られた。


その後ろから直樹が追いかけてくる。


人混みの中での鬼ごっこ。


お互い見失いそうだ。


「春樹くん、離して!」


「だめ。兄貴がいなくなるまでは離さない」


逆に私の手を掴む春樹くんの手は、力を少しだけ増した。


………それなら。


「はーなーしーてーっ!」


私は立ち止まり、力いっぱい体重を後ろにかけた。


さすがに全体重には引っ張られるようで。


「ちょっ…星蘭さん!」


私たちが立ち止まってる間。


私たちと直樹の距離は徐々に縮まっていく。