「は…離してくださいっ!!!」


私の渾身の力を込めて、振り払う。


……つもりだった。


でも。


何回振り払おうとしても。


私の腕を強く握りしめる手が離れることはなかった。


「星蘭ちゃん。僕は大人の"男"だよ?」


大人の……"男"。


そうだった。


小さいお兄さんとはいえ、年下の春樹くんとはいえ。


男の子だったんだ。


こんな女子の小さな力なんて非じゃないんだ。


捕まってしまった以上、私に権限はないわけで。


「ってわけで、春ちゃん!!車!」


「りょーかいっ」


どこかに行ってしまい春樹くんの姿は見えなくなった。


私とお兄さんの二人っきり。


「あの…」


「何ーっ?」


「私をどうするおつもりなんでしょうか―…」


「ん―…プチ誘拐?」


「誘拐!?」


何、誘拐って!!