後ろを見ると、小走りで走ってくるお兄さんがいて。


前を見ると、春樹くんが立ちはだかっていて。


周りには注目されて。


「…どうしよう…」


そう呟くしかない状況で―…。


あたふたしている間にお兄さんと私の距離は徐々に縮まっていく。


なんとかしないと。


瞬間的に頭をまわした結果。


春樹くんは大きいから走っていっても捕まるだけ。


なら、お兄さんの小ささなら大丈夫!(お兄さんには失礼だけど)


私はお兄さんのほうを向き、意を決して走り出した。


「星蘭ちゃん?」


走って走って。


私はお兄さんの横を通りすぎようとした時だった。


「きゃっ!」


私の手が力強く引っ張られた。


「逃げたらダメだよー」


もちろん。


その力強い手は、お兄さんな訳で。


にこにこと微笑んでいるままだった。