莉子は先に帰ってもらった。


もう巻き込まないって決めたから。


私だって子供じゃない。


大丈夫。


ちゃんと対処できる。


でも今日、会いませんように。


そう唱えながら、歩いて。


……いたのも束の間だった。


「星蘭ちゃん!」


その聞き覚えのあるまるで子供のような高い声に反応し、後ろを振り向いた。


「…やばっ―…」


直樹のお兄さんが、笑顔で手を振っている。


距離はある。


――逃げるが勝ちだ。


そう思った私は、体を元に戻し。


逃げる体勢に入った。


なのに。


「あ、星蘭さん発見」


「…春樹…くん…」


前にはこれまたにこりと微笑んだ春樹くんが立っていた。


前も後ろも逃げれない。


左右に路地もない。


どうしよう。


いきなり緊急事態……っ!!