くすくす笑って弟を見下ろす。
うーうーっと唸ってる那智は重いって連呼してやがる。
仕方が無いから悪戯をやめて、那智の隣に体を置く。
畳の上にいる那智に対して、俺の体は崩れた敷布団の残骸の上。
まるで俺等の間に境…、んにゃ隔たりがあるように見えたから、俺は那智の体を残骸の上に引きずり込んだ。
必然的に密着する体と体、
自然と握り合う手と手、
かち合う目と目、
「兄さまのせいで布団がぐっちゃぐちゃです」
「また畳めばいいって。
どんなことをしても、此処には俺とてめぇだけ。
この部屋には誰も俺等を虐げる奴はいないんだからな」
「それって凄く幸せだと思います」
「ああ、そうだな」
「でも一番幸せなのは」
「なのは?」
「兄さまと一緒に暮らせてることです。
誰にも怒られず、兄さまとこうしていられる…、夢みたいです」
「夢じゃねえよ。馬鹿」
「だって幸せだから…兄さま、幸せ?」
「たり前だろ。幸せだよ。死にそうなくれぇな」
繋いだ手を握り締めて笑い合う俺達。
こうして俺達はお互いの温もりを共有することで孤独から身を守っていた。
今も俺達はこうして温もりを共有し合っている。
俺も那智も孤独だ。
孤独だから、俺達兄弟で愛情を分け合ってる。
―――…それは父母の愛情の代わり。
俺等は餓えた心をお互いの愛情で補ってる。
俺達の餓えは俺達兄弟でしか補えない。
俺はそう確信していた。