―――…俺がまともな家庭環境で育ってたら、今とは別の俺がいたのかなぁ。
ダチと気兼ねなく駄弁ったり、女に欲情したり、他人を自然と信用したりできる、まともな人間になっていたんだろうか?
俺自身、自分が偏屈だってのは十二分に分かってる。
けど今更、別の未来を想像したって無い物強請りだろ。
俺は今の性格を変えるつもりも無いしな。
自分の心を偽っても最後には那智が一番に定着しちまうし…。
那智に恋愛感情は無い(と思う。恋愛したことないから分かんね)、
けど那智に対する家族愛はある意味恋愛感情より厄介だ。
俺は那智を手放す気さえねぇんだから。
これが恋愛感情だっていうなら、俺は甘んじて受け入れようと思う。
周囲から近親相姦だの、ホモだの、キモイだの言われても、俺はこの気持ちを偽ることはできねぇと思うから。
「兄さま、さっきからちっとも食べてませんけど、大丈夫ですか?
おれ、兄さまの視線を感じっぱなしですし…、おれの顔に何かついてます?」
不思議そうに俺の顔を覗きこんで来る弟に、俺は一笑、誤魔化し笑いを零して止めていた手を動かし始める。
那智は俺をいつだって追い駆けてくれる可愛い弟。
その弟を、俺は全力で守っていく。
昔も今もこれからも、それが俺の存在意義だって思うから。
パスタを平らげて、でっかいパフェを仲良く半分にして食べた後(半分以上は俺が食った)、俺は那智を連れて店を出た。
このまま帰っても良かったけど、折角だし、那智と買い物に出掛けた。
服を買ってやりたかったけど、あいつ、試着したりするの極端に嫌うから…、那智は服屋自体嫌ってる。
服屋は諦めて本屋や文具店、雑貨屋に足を運んだ。
そこで那智の欲しそうな物を買ってやったし、俺は俺で好きな物を買った。
観葉植物を育てることが好きな那智のために花屋にも足を運んだ。