兄弟揃って変態発言に、やや羞恥を噛み締めながら、兄さまは言葉を続ける。

肌フェチなんだと兄さまは自分の性癖をおれに教えてくれる。
変態だと罵ってくれ構わない、なんて言うけど、兄さまを罵れるわけないから心の中で却下。

兄さまの語りに耳を傾ける。


「べろちゅーもできるようになった。
結構、キスってのが良いもんも分かった。

けど問題はセックス。
俺は那智にそういう意味じゃ欲情しねぇんだ。
困った…、兄さまは不能か?」


「ううん…、と、言われましても、おれも兄さまに欲情しませんよ?
大体無理やりにエッチしなくてもいいと思います。

何か問題点あるんですか?」




「那智の全部を食らいたい。足りない。欲しい。満たされない。

セックスすりゃ何か変わる…、ような気がした」




兄さまは欲求不満を口にする。

ここ最近、慌しい日々が続いていたからか…、おれと兄さま、そう十分に兄弟のスキンシップをしていない。

おれ達のスキンシップってふたりっきりで、お喋りするとか、抱き合うとか、一緒に寝るとか、そんなものなんだけど…。


最近は人目が必ずあったし…、ふたりぼっち世界に浸れなかった。


兄さまは欲求不満なんだ。
おれも実は、そういう意味では欲求不満かもしれない。


だけどセックスって無理やりしなくていいと思う。


おれは兄さまに再度言う。
気乗りしない時にしてなんだし、セックスは話によれば痛いらしいから…、ううっ、なんだか想像するだけで身震い。


蛇口を捻ってシャワーの水を出すと、おれは泡を洗い流す。


その際、兄さまに言った。



「今日は夜更かししちゃいそうですね。
久しぶりにだあれもいない、ふたりっきりの世界ですし」



って。


兄さまは何も答えなかった。


でも、その言葉の意味を理解してくれていたらしく、細く微笑んでいた。