「那智と、こうやってゆっくりと風呂に入るのも久しいな」
兄さまの手料理を平らげた後、おれは兄さまと一緒に入浴していた。
久しぶりだと言いながら湯船に浸かる兄さまは、とてもリラックスした顔を作っている。
同意するおれはうん、と一つ頷きながらスポンジで体を擦る。
泡だらけのスポンジを擦る度、全身の垢が取れていくような気がした。気持ちが良い。
入院している頃は、ゆっくりお風呂になんて入れなかったしなぁ。
「いつ見ても那智の体、綺麗だよな」
と、恍惚に兄さまがおれの体を見つめてくる。
おれの体が綺麗、同意しかねる。
だっておれは兄さまの方が綺麗だと思ってるから!
言葉を返せば兄さまは一笑、「綺麗なのは那智なんだよ」目尻を下げてくる。
だから欲しくなる、そう告げてくる兄さまにおれは瞬きをした。
水蒸気で白くぼやける視界の中、兄さまを捉えて首を傾げる。
「エッチしたいんですか?」
「んー、那智。問題はそこなんだ」
浴槽の縁に肘を置いて、兄さまは眉根を寄せる。
「正直に言って那智の体を舐めたい。噛みたい。味わいたい。そうは思ってる。
あ、てめぇ引くなよ。
兄さま泣くぞ。マジ泣くぞ」
「引いては無いですけど…、ちょっと困惑です。
おれはなんて返せば良いんですか?」
「『わぁー兄さま、嬉しい』とか?」
「えぇーっと、じゃあ…嬉しいです。
どうぞ舐めて噛んで味わってクダサイ…」
「………」
「………」
「………」
「………」
「話、戻してもいいか?」
「はい、今の空気におれも耐えられそうになかったので」