―…親父はこれから、俺等に何を奪われるか怯えた生活を送るだろう。
んでもって俺等に何を奪われたか気付いた瞬間、絶望を味わうんじゃないかと思う。
せいぜい苦しんで欲しい。
ふたりぼっちの世界を壊そうとした奴なんだ、死ぬほど苦しんで欲しい。
ふと福島との出会いや会話、その他諸々が脳裏に過ぎる。
あいつ、ほんっといけ好かない女だったな。
出会いから最悪だったし、口喧嘩は絶えなかったし、お節介焼きだし、けど他人に一々優しさを持ってる女だった。
福島を利用したことに罪悪があるか…、聞かれたら俺は何も答えられねぇ。
優一の時もそうだが、二人に関しちゃ罪悪を感じてるかどうか分からない。ただ気持ち的に沈む時がある。
母親に対しての罪悪は欠片も持っちゃねえ。寧ろ清々した。
けど二人に関しちゃ…、高村も含む利用した奴等に関しちゃ罪悪、どうなんだろうな…。
福島朱美、か。
些か、第二の俺はあいつに興味を抱いていたのかもしれない。
誰彼構わず、強く、優しく、んでもって気丈に振舞う女に、少しばかし興味を抱いていたのかもしれない。
俺がまともだったら好いてたかもな、ああいう気の強いいけ好かない女。
今の俺じゃぜってぇねぇけど…、どうなんだろう、俺自身の真相は謎のままだ。
「若旦那が殺した青年さんの死体は、こっそりと墓建てる…で良かったのか?」
弁当を食い終わった鳥井が、ビニール袋にソレを片付けながら俺に問いかける。
俺は頷いた。
山海に捨てるよりかは、マシだろ。
捨てたら見つかる可能性もあるしな。
「誰も墓参りになんざ行かないだろうがな」
「そんなこと言って…、自分が行ったりして」
「殺すぞ」
ギッと運転手を睨めば、「怖い怖い」鳥井はおどけ口調で肩を竦めてきた。
誰があいつの墓参りになんざ…、くそっ、俺には那智で十分なんだ。
と、手前に言い聞かせてみる。
本当に墓参りに行くかどうかは分からねぇが、鳥井は俺の近未来の行動を見透かしているようだ。
優しいことで、なんて皮肉を飛ばしてきやがる。