大きな懸念を抱いていた矢先、娘が息子の大学に通うと言い出した。

強い反対を見せれば不審がられると、奴は渋々許可は下ろしたそうだ。

国立K大学はマンモス校、そう簡単に俺等がはち合うことも無いだろう。


ポジティブポジティブに考えていたが、娘は様子が変わってしまった親父を心配して、親父を追い詰めているが学生を捜していた。


親思いが災いを呼んだ。

娘はある一人の女に目を付けられ利用、俺等と娘の関係の真実を握り、親父に会った。


女は親父に動揺する話を持ちかけた。

娘が自分を追い詰めている学生を捜していること、またその学生が傍にいること、学生が娘と険悪な仲なこと。


このままだと真実が知られる上に、娘も危うくなる。


女の誘いに乗った親父は、実の息子達を消そうと決めた。

どんなに金が掛かっても、家族に真実を知られるわけにはいかない。

知られたら自分の居場所が、信頼が、愛情が無くなる。

親父は家族を守ると表向きで言いながらも、結局は自分のために物騒な案を母親に持ちかけた。


丁度俺等の存在を疎ましく、また脅威に感じていた母親もそれに乗り、鳥井が刺客として俺等のもとに送られた。


だけど程なくして母親が死亡したとニュースで知る。

俺等が行方不明なことに親父は安堵したに違いない。

どうかこのまま何事も無く、平穏な日々が訪れますように…なんて神様に願ったかもしれねぇ。


そんな願い、神様とやらが聞き届けてくれる筈もねぇけどな。


俺等が発見されたと知って、親父は心底肝を冷やしたことだろう。
あいつは一度も見舞いにはきたことなかったが、見張らせていた鳥井曰く、何度か病院は訪れていたらしい。

もしかしたら俺等を殺そうと、計画を企ててたのかもな。


だが俺等は逃走した。

今、あいつは酷く怯えているに違いない。



「さあて仕上げはお電話ですかね。ほら、若旦那」

「ああ」



俺は鳥井から携帯を借りて、ある場所に電話を掛ける。

そりゃ何処か?



答え、親父の会社。