「優しかった親父がある日、必要以上に神経質になった。

異常なまでに戸締りをしたり、電話線を切ったり、カーテンを閉め切ったり」


心配したてめぇは親父の後をつけた。

その内、親父を追い込んでいるのは学生だって情報キャッチしたてめぇは、大きな殺意を抱いた。

どうやら学生は大学の学費を無理やり親父に支払わせているらしい…。


親父は人が優しい、何か弱味でも握られたに違いない。


正義感溢れているてめぇは、大学に入学して犯人を捜し始めた。

四年間通えば、必ず犯人に遭遇する筈。

てめぇはこっそりと、でも、血眼になって犯人を捜した。


親父を追い詰めている学生を…、その犯人さえいなくなれば、親父はまた元の親父に戻ってくれる。


そう信じて。


全部高村に聞いた。
だから高村はてめぇを使って利用することができたんだろうな。


嗚呼、ほんとてめぇは大層、家族思いだな。感服する。



「けど、てめぇの願いは叶えられそうにねぇよ。
てめぇの捜す学生は今日をもって町を出るんだからな。


福島朱美さん」



絶句する朱美は、まじまじと語り部を凝視。
次第次第に思考回路が作動し、大きな怒りを抱いた。

では…、では…、父親を追い詰めていたのは目前の男。



「あんたがっ、お父さんを?!」



バンッ―。

テーブルを叩いて朱美は立ち上がった。
ビクッと驚く那智など目もくれず、しれっと紅茶を啜っている治樹にガンを飛ばす。

肯定の返答を返す治樹はソーサーにカップを置いて、朱美を見上げた。