朱美は三人分の紅茶を淹れて、兄弟と共にシュークリームを食べ始めたのだが(毒は仕込まれてなかったようだ)、ふと我に返って今の状況を冷静に分析。
警察に追われている不法侵入者兄弟とスイーツを召し上がっているなんて…、大層おかしい話ではないか、と。
シュークリームに齧り付きながら、朱美は治樹と那智を交互に目を向ける。
美味しいおいしいとシュークリームを食べている那智と視線が合い、彼はへにゃっと笑ってきた。
思わず此方も微笑を返す。
嗚呼、こういう子を弟に出来たらなぁ…。
残念ながら自分は一人っ子、兄弟姉妹がいないため、弟がいる治樹が羨ましく思った。
「やっらねぇからな」
ドドドドド不機嫌に呻く弟馬鹿がガンを飛ばしてきた。
相変わらず弟一筋な奴だと呆れながら、朱美はまたシュークリームに口に入れる。
「で…、下川。
どうしてあたしのところに?
ただ別れの挨拶をしに来たわけじゃないでしょ」
「……、まあな」
「用件は? 30文字以内、単刀直入に述べよ」
間を置いて、治樹が口を開く。
「福島、てめぇさ。
風の噂で聞いたんだが、一年とちょっと前に親父の様子がおかしくなったことに気付いて、
その原因を掴もうと国立K大学に入学したんだろ?」
何故それを…、それを知っているのは限られている。
安河内友香、それから高村彩加の二人に限られてる。
瞠目する朱美に治樹は構わず続けた。