擦り寄ってくる兄さまに、「落ち着きました?」小声で尋ねてみる。


「まだ恐い」兄さま、

「他人の言葉信じちゃうんですか」おれ、

「………」兄さま、

「不安になるなら」おれ、

「その不安を忘れるくらい」まだおれ、



「愛してあげます」笑うおれ。


途端に兄さま、抱き締め返して「愛してくれ」縋ってくる。

正しい愛し方なんておれは知らないけれど、おれは兄さまが満足するならなんだってする。

ゆっくりと兄さまに口付けして、重ねて、お互いの舌が…、あとは野となれ山となれ。

兄さまがしたいように、やりたいように、おれもしたいように、やりたいように、エンドレス。


もう十分だって兄さまが思うまで、おれはこの行為に付き合った。

段々過激になっているおれ達の行為に疑念を抱くけど、まあ、これも一種の家族の愛し方ということでご愛嬌。


やっといつもの兄さまに戻る頃には、おれはぐったりの息遣いもてんで荒く、兄さまも息遣いがやたらめったら荒かった。

「落ち着きましたか?」再度兄さまに問い掛けると、「ン」嬉しそうに兄さまは返事をして、ごめんと言いながらおれの鎖骨を舐め始める。


兄さま、舐め癖でもついたんだろうか?

最近、よく舐められるんだけど。



「那智。さっきの見舞いで、全部の歯車がかち合った」



すーっと鎖骨から首筋に舌を這わせる兄さまは、俺に微笑してくる。


え、どういうこと?

兄さま…、だってまだ、お父さんと会ってもないのに…。


パチクリと瞬きをするおれに対し、兄さまは歪んだ笑みを浮かべてくる。





「さあ、那智、始めよう。最後の戯曲を」





俺達の世界を、ふたりぼっちの世界を守るために。



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