取り敢えず自虐行為だけは止めさせないと。
おれは兄さまの体を押し倒して、非力にも関わらず兄さまの両手首を掴むとベッドシーツに縫い付けた。

力のある兄さまが暴れようとする。
嗚呼、おれは力が無いんだって、兄さま。


まだ嫌だ嫌だ嫌だって連呼してるし。


というか兄さま、どうして他人の言葉に動揺してるの?

兄さまはおれに言ったじゃないか。他人の言葉を信じるなって。


じゃあ、兄さまも信じちゃダメだよ。

だって兄さまの全部、おれのなんだから。


そうでしょ? 治樹兄さま。

貴方がそう―…、おれに教えてくれた。



「兄さまはおれの…。
なのにダメじゃないですか、他人の言葉を信じちゃ。兄さま、お仕置きです」



笑顔を向けて、おれは兄さまの両手首を押さえたままそっと顔を近付けて、耳に噛り付いた。
ピアスをしていない耳朶を強めに噛み付く。
 
「イッテ!」兄さまは痛いって悲鳴を上げた。
 

それによって少し正気を取り戻したのか、「…は?」なんだこの体勢、目を白黒させている。



でもおれは気にせず耳朶を食んで、舐めて、しゃぶり続けた。


大変遺憾な事に兄さまは耳にあまり感じるタイプじゃないみたい。

「ン」としか、声を漏らさないし…、ちょっと残念。
いつもの仕返しができない。

おれは結構…うん、名誉のためにこれ以上は言わないけど、結構きついんだよ。あれ。

 
最初は混乱していた兄さまだけど、次第次第に冷静になったのか、今はおれの好きにさせてくれている。

暴れることもなくなったから、手首を押さえつける必要も無くなった、けどおれはまだ兄さまの手首をシーツに縫い付けている。



「那智、なち、なち。ギュっしてくれ。これじゃ足りねぇ」



と、兄さまが懇願。
 
舐められるよりも、体温、鼓動そのものを感じたい。兄さまはそう言ってくる。

何だかんだでおれは兄さまに甘いから、お仕置きする気力も失せて、甘えてくる兄さまをいっぱいっぱいに抱き締めた。

おれは兄さまと一緒にベッドシーツの海に沈む。