ふと俺達の寝ていたベッドの上に投げていた俺の上着が無くなっていることに気付く。

下に落ちたのか?
あ、まさか…、俺はベッドに歩み寄って、壁とベッドにできた小さな隙間を覗き込む。





いた。





俺の上着を抱え込むように眠っている小動物が隙間で寝てやがった。
こんな狭くて暗い場所になんで…、俺は身を丸くして寝ている那智を引き摺り上げた。

動作で起こしたらしく、那智はジワジワッと瞼を持ち上げる。

「那智」

声を掛ければ覚醒したらしく、欠伸を一つ零して目を擦り、おはようございますと挨拶。

そしてホッとしたように俺の顔を見て笑顔を零す。


「起きたら兄さまいなくて…、ひとりぼっちだって思っちゃいました。

兄さまに、またおれ、酷いことしたんじゃないかって…、おれ、悪い子ですから…、にーさま、…消えちゃったかと」


―――…。


手前で言ったこととはいえ、傷付いてる那智を目にすると罪悪感が生まれる。
 
きっと一旦は目を覚ました那智だけど、俺がいないことに焦って、悲しくなって、でも眠くて。
 
俺の私物である上着持ってあんなところにいたんだろうな。

狭い場所は圧迫感があるから、何となく孤独感が紛れるとでも思ったんだろう。

想像以上に那智を追い詰めたようだ。

俺も駄目な兄貴だな。



んで、駄目な部分がもう一つ。

俺がいなかったことに震えている那智を見て喜んでいる面だ。


歪んだ感情が俺を支配してる。


罪悪と歪んだ愛情が交差する中、「いい子だ」俺は那智の顎をゆっくり掬い上げて微笑する。


「那智はいい子なんだよ。嫉妬に狂ってた俺を許してくれたんだからな。
手前を卑下することは許さない」


「にーさま…」


「綺麗でいい子だ、那智。

ずっとずっとずーっと俺の弟…、てめぇ以外、身内も繋がりもイラナイ」


「うわっ!」