散々泣いたおれの手を引いて、兄さまはキラキラ光るネオンの下、雑踏の多い街道を歩く。
泣き過ぎて頭痛がしてくるおれを気遣ってくれる兄さまは、いつもどおり接してくれた。もう冷たさのカケラもなかった。
それがまた涙を誘うから、おれは顔をクシャクシャにする。
「那智、もう泣くな」
兄さまが頭を撫でてくれる。
嬉しくてうれしくて喉の奥が引き攣ったのはその直後のことだった。
「那智…、やつれたな。何も食ってないんだろ?」
「せっ…けん」
「……。いやそりゃ、食いもんじゃねえから。俺のせいだな」
おれの顔色を見て失笑する兄さまは、何度も謝ってきてくれた。
兄さまは何も悪くないのに…、兄さまは優し過ぎるんだ。
洟を啜って兄さまの手を握る。
握り返してくれる兄さまはおれに優しく綻んだ後、大通りに出てとあるコンビニへ。
コンビニに入るのかって思ったら、その前に停めてある車の一つの車窓をノックした。
鳥井さんの車だって気付くのに、ちょっと時間が掛かった。
ロックの解除を確認して、兄さまはおれを先に後部座席に乗せて、自分も車に乗り込む。
ドアを閉める兄さまに鳥井さんは、
「俺の扱い酷くね?」
よく分からないけど愚痴を漏らしていた。
何か兄さまにされたんだろうか?
綺麗に無視する兄さまは、助手席に置いていたビニール袋を取っておれに差し出してきた。
中にはおにぎりとかサンドウィッチとかが入っていて美味しそうだった。
急に空腹を思い出したおれは、一心不乱に二日ぶりの食事を堪能、お腹が満たされた後は夢路を歩くことにした。
その間、兄さまはずっとおれに綻んでくれたり、頭を撫でてくれたり、優しい言葉を掛けてきてくれたり。
凄く幸せだった。
もう何もいらない、そう思うくらい幸せ…、おれは幸せに気持ちを満たしながら眠りに就いた。大好きな兄さまの傍で。