「にーさまのっ…おとうと…、でいい?」

「―…ずっと弟だ。ずっとてめぇはおれの弟だ。那智っ、てめぇはおれだけの弟だろうがっ」


向かい合う形でキツクキツク抱擁される。

 
歩道橋の上、通行人だっているのに、おれは張り詰めていた糸が完全に切れてしまった。


兄さまに縋ってワンワン泣いた。

大声で泣いた。


声を嗄らす勢いで泣き続けた。


誰かに名前を呼ばれること、誰かに必要とされること、求められることがこんなにも喜ばしいことだったなんて。


仮に世界中の人がおれを蔑んだとしても、目前の兄さまだけがおれを必要としてくれる。



それだけでおれは幸せなんだって気付いた。



兄さまの大切さを改めて、ちがう、今以上に知ったんだ。