【一章
  玻璃の偏愛】



―――兄さま、おれって変ですか?

―――ん? なんでだ?
 

―――だって…。
三好先生がおれのこと…、あ、保健室の先生なんですけど。

『お兄さんを“兄さま”って呼ぶのは少し変かもね』

って…。

おれ、変ですか?
呼び方、変えた方がいいですか?


―――他人の言うことなんざ気にするな。てめぇは今のままでいいよ。

―――兄さま、ヤじゃないですか?

―――今更変えられる方がよっぽどヤだっつーの。

―――うーん…でもぉ。


―――なーち。
兄さまと教師の言うこと、どっちを取る気だ?


―――兄さま!


―――うっし、いい返事だ。

気にすんな。
どーせ俺等は最初から周囲と育った環境が違ったんだ。

皆と違って当たり前だ。


いいか、那智、他人の言うことなんざ信用するな。

馬鹿見るのは俺等だ。


分かったか?

他人なんて誰も俺達を救っちゃくれねぇ。
信用するだけ無駄だ。