毒でも盛られていたら、なんて考えると今頃になって背筋が氷結する。

致死に達してたらその場でご臨終なんだろうけど、実質お冷を口にしたのは俺じゃなく那智なわけで。

下手すりゃ那智がご臨終していたというわけだ。

だったら俺も、その日の内に死んでただろうな。


那智の居ない世界なんて塵同然だから。


しかしまあ、俺に殺意があったとするならの話で進めていくと一服盛った方が事足りる話だと思うんだが。
チンピラ曰く、奴等は俺をシメるだけのようだった。

母親とは関連が無いんだろうか?

俺の疑問に、鳥井は言う。
案外物事ってのは身近なところで複雑に絡み合ってるもんだ、と。


「関係ないようで糸が絡まっていることが多い。
解れ口を探して手繰り寄せてみ? 意外と芋づる方式で真実を手に入れられるもんだから。

そしてその真実は意外と簡素で安作りな価値しかねぇ。
しごくクダラナイ真実を若旦那は手に入れるんじゃねえか?」


「現にクダラナイ理由でアダルト会社さんから狙われたしな」

「おやおや押し売りはオキライ?」

「ジブン、玩具なしで鳴かせるのが好きなもので」


それはごめんあそばせ、鳥井は大袈裟に肩を竦めてみせた。

だけど良い刺激にはなると思いますよ、マンネリ化を防げマス。

なんて余計な事を付け足してくる表向きアダルト会社社員に、「興味はアリマスケドネ。お薬は使いマスし」アイロニー含む笑みを返す。


「だったら良い商品アルネ」と悪徳商人の鳥井、

「どんなのっスか?」と悪性学生の俺、


「天国にも地獄にも逝けそうな商品アルヨ」鳥井、

「どんくらいっスか?」俺、


「5分で相手をアンアンなーむ」鳥井、

「5分でアンアンなーむ、凄いッスね」俺、


「瞬間的なものもアルアルヨ」鳥井、

「使った瞬間なーむっすか。良い仕事してるっスね」俺、


「欲しいアルカ?」嬉々する商人、

「時と場合によっては喉から手が出そうなほどっス」笑々する学生、


「何のお話ですか?」首を傾げる純粋な第三者。