「そうだな。殺しっつーのになると値段は百万単位だ。
社会的地位が上にいけばいくほど、値段は高くなっていく。
政治家らへんになると下手すりゃ千万単位だ。
マスコミが美味い話題を持っていると思っている人物は金になるぞ。
で、お前を襲った奴等、三人で九十万って言ってたんだろ?
そのチンピラさん達は。
十万単位はありえねぇよ。
こっちは人に復讐したり殺すことで罪科を負うんだからな。
ま、リンチとかなら十万単位でも可能性は無いことは無いが…、ひとり三十万は少ねぇな。
こっちが願い下げっつーか。
同職じゃなさそうだなぁ」
単に小遣い稼ぎを目的とするチンピラを使ったって感じ。
感情なく鳥井は意見した。
てことは、鳥井のような職には携わってないのか?
深まる謎に、「どう襲われた?」襲われた当時のことを聞いてくる。
包み隠さず、ファミレスで薬を盛られて隙を突かれたことを話す。
幸いにも俺は盛られていたお冷を飲むことは無かったが、弟が被害に遭った。
また連れ達も同じように薬を盛られて眠らされたようだ。
しかし連れの中に必ず犯人がいる筈なのだ。
あの四人の誰かが。
母親との繋がり有無関係なく、誰かが俺達を狙ってきやがった。
「兄さま、どーぞ」
鳥井に説明、んでもって思案していた俺に能天気な声で呼び掛け、那智はステーキ肉を一切れ、フォークに刺して向けてくる。
「いいよなー」
愛されちゃってくさ。
こっちは水であおずけだぜ?
…おりゃ犬かよ。
忠犬にでもなっちまった気分。
鳥井の皮肉をスルーして俺はステーキ肉を口に入れる。
熱々の牛肉が和風たれと一緒に俺の口内にジンワリ広がった。美味い。
あんがと、俺は那智に礼を言った後、お冷の入ったグラスを手に取って口元に運ぶ。
―…こうやってあの時、お冷を飲んでたら、俺はリンチ、もしくは命を落としてたかもな。