「なるべく揉め事を起こさないよう、我が社は二重依頼をお断りしてる。
揉めても出るのは屍と損ばかりだしな。
考えてもみろ、人手は足りなくなるわ、遺体の処分はしなきゃいけないわで手間だけが出る。

揉め事なんざ損々、金にもならないぜ。

まあ、裏社会で生きてる同士だ。チャカを持ってるってこともざらにあるしな。
簡単に眉間に穴をあけることもできるだろうよ。

俺はまだ持ってないけどな」


“まだ”ってことはいつかはチャカを持つのか?

チャカで平然と人を殺すのか。不幸にするのか。
自分の幸せのために、他人の命をや幸福を砕いてその上に立つのか。


良心の呵責に苛むことは無いのか?

……まあ、他人に罪悪を感じない俺も人のことは言えねえけど。


疑問を抱きながらも、「チンピラはてめぇの手先じゃねえのか」念を押す。
頷く鳥井はゆっくりと煙草を吸った。

単独で仕事をこなしてる、ふーっと紫煙を吐きながら俺に視線投げた。


「なるべく一人でやっちまいたかった。
話したとおり、俺には借金がある。

早く返しちまいたいから、取り分を多く貰おうって欲出して…、ま、今の状況よ。

あんたに殺られそうになった時、ぺらぺら守秘義務は話しちまうわ、命乞いしちまおうかなんて思うわ、情けないことに大怪我負うわ。


踏んだり蹴ったりってのはこのことだ。


弁解するなら、俺もまだまだ新米だからな。
これだけでもご愛嬌だと思わないか?

しかしまあ、そのチンピラ達の手取り金はえらく少ないな」


「普通はどれくらい何だ?」


人の不幸で金になるっていうのも変な話だけどな。

ンー、頭を傾ける鳥井は眩しい日差しが射し込んでくる窓に目を向ける。

頭で計算してるみたいだ。