何度も言うようだが、兄貴のお前じゃなく弟の方を二度も狙ったのは、その方が効率が良かったからだ。
 

下川芙美子の情報で俺はお前が弟至上主義だっていうことを知った。

手前でも調べたが若旦那を狙うよりは、弟くんを狙った方が仕事もスムーズにいくし、何より中坊だから殺りやすいと思ったんだ。


けどま、俺のヘマで弟を逃がして。

その日に片付けるのが雇い主との契約だったら、向こうは激怒してな。


減給するって言いやがった。

会社(ウチ)はヘマしたら減給できるシステムでな。


だから実質、俺は仕事を終えても150万円しか貰えねぇ契約だ。


んでもってその一部を事務所に納めないといけないから百万くらいか。

俺が貰えるのは。
少ねぇよな。


まあ私情は置いておいて、下川芙美子はお前の存在に酷く怖じている様子だった。

話を聞けば、長男の長けている行動力と判断力に恐れをなしているとか。

長男の存在があると自分の生活が危ぶまれる。
だから最悪、弟ではなく、兄貴をどうにかしてくれたら金は払う。下川芙美子はそう俺に言った。


若旦那に恨まれてる自覚がありありみたいだったな。


消す期間は一週間内だって無茶振りを言ってきやがった。

普通は相手のことを調べたり何だったりで二週間は掛かるんだけどな。


俺は相手が学生だから大丈夫だろって高を括って承諾した。

ま、結果はご覧とおりだ。
ヘマした挙句、あんたに寝返り、守秘義務も何も忘れてペラペラペラペラ暴露してる。



「さてと、此処までご質問は?」

「山のようにあるが、まずてめぇだけか? 俺等を狙ってたのは」

「と、言うと?」

「俺と那智は一度、このファミレスを出てチンピラ三人に襲われてる。
ひとり三十万の仕事だっつってたが」