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【昼時のファミレスで】
那智と軽くハプニングがあったが、俺等は無事に駄弁りの場(という名のファミレス)をゲットすることに成功した。
昼時のファミレスは混雑しているかと思ったが、平日もあってか案外空いている。
おかげで俺達は難なく席に座ることができた。
空腹だったのか、那智は席に着くや否や、早速メニューを開いて目を輝かせていた。
そんな那智にホッと安堵する俺がいる。
だってなぁ…、さっきパニクってたのか知らねぇけど、俺が呼び掛けても振り返らなかったんだ。
焦るだろ、激焦るだろ。
もしかしたら那智、他人に唆されて…、なーんて不安が過ぎってたけど、教師と口論しただけなら良かった。
とはいえ、学校を飛び出したのは頂けないけど。
まあ…口論以外は何事もなさそうだし、取り敢えず、暫くは学校に行かせるのを控えるか。
メニューを眺める那智をそのままに、俺はグルッとファミレスを見渡す。
鳥井に頼んで(というか命令?)、やって来た場所は“例”のファミレス。
そう、睡眠導入剤を仕込まれた事件があったあのファミレスだ。
ちょっとあの当時を思い出してみたいのもあって、俺はファミレスを選んだ。
「兄さま、兄さま」
服を引っ張られて、俺は那智に視線を投げる。
目をキッラキラさせてる那智はデザート欄を指差して俺を見上げてくる。
………。
ヤーな予感がするな、おい。
俺は那智の指差すデザートに目を向けた。
「ホットケーキが食いたいのか?」
「はい。バニラアイスが付いてくるんです」
「…ぜんざいも食いたいのか?」
「はい。食べたこと無いので」
「……モンブランもか?」
「はい。シメに食べたいです!」
ンなに食えないだろーが、お前。
けど那智は甘い物が食べたくて仕方が無いのか、どれも食べたいと俺に強請ってくる。
ご飯はいらないからデザートを食べたい、駄々を捏ねる那智に俺は溜息。
さっきまでの反省は何処にいったやら。