宮野くんは部活のこと、最近教室で起こったこと、教師の愚痴、勉強の必要性等など、面白おかしく話してくれる。

 
おれは一々笑声を漏らした。

会話らしい会話はできなくて、おれは宮野くんの話に相槌を打って笑うだけだけど、彼は満足気に笑みを返して語ってくれる。


同級生とこんな風に接するなんて初めての経験。



小学校時代は孤立してたから…正直言って凄く楽しかった。



そんなこんなで宮野くんの話に耳を傾けていると、「あら?」三好先生の微笑ましそうな声と、「宮野じゃないか」担任の大道先生の声が聞こえてきた。

びっくりするおれに対し、「どもども」宮野くんは軽く手を上げて二人に会釈。


「俺、熱があるんで保健室で休ませて貰ってます」

「宮野…、お前、本当に熱があるのか?」

「ありますあります。もう具合悪くて死にそうでーす」


大道先生は呆れながらも、何処と無く表情が柔らかい。
 
椅子を持っておれ等に歩み寄って来る。

硬直するおれはぎこちなく俯いて、タラリと冷汗。

なんだか妙に心臓が圧迫される。

大道先生は随分慣れてきたんだけどな…、やっぱり駄目だ。緊張しちゃう。

兄さまのお友達さまなら、まだ緊張も軽く済むのに。


……お友達さまの場合は兄さまがお相手してくれるから、なんて人任せな気持ちがあるから緊張も少ないんだと思う。


担任の場合は基本的におれが相手しないといけないから…、嗚呼、大道先生と話すのは緊張するな。

宮野くんの隣に椅子を置いて、それに腰掛ける大道先生は、おれを怯えさせないように優しい物の言い方で話を切り出してくる。


「宮野とは喋れたみたいで良かったな、下川」

「ぁ…ぅ…その…」


どうしよう、どうしよう、なんて言えばいい。
焦るおれに大道先生は変わらず微笑。


「責めてるわけじゃないんだぞ。
あんな風に下川が学校で笑うなんて初めて見たから、少し嬉しくてな」