「今まで何してたんだ? 下川。
どーでもいいけど、福島と安河内が騒いでるぞ。例のことじゃないか?」


「さあな、知らね。俺は帰る」

「は? お前、午後は?」


「出ねぇよ。
こうしているだけ時間の無駄だ」


途端に女子達からは非難轟々。大嵐が巻き起こる。

それでも俺は無視した。
極力大学の奴等とは関わりたくない。“極力”はな。

もし大学以外のことで関わりを持つことがあれば、そりゃ積極的に関わらせて貰う。


俺は俺と関わる全員に冷ややかな眼を送って、そのまま講義室を後にする。


「下川!」


すぐさま福島が俺を追い駆けてきた。


俺は振り返ってガンを飛ばす。
怯む福島に脅しをかけた。


「ダチを思うなら、俺という冷血男の存在を忘れさせることだな。

んでもって俺との接触を禁じることだな。
もっと不幸になるぜ、あいつ。

てめぇも下手に俺に関わるな。命が惜しければな。

福島、てめぇは“あれ”を目撃してるんだ。


下手に関わると―…、忘れるな、俺はてめぇ等とはちげぇ」



すっかり大人しくなる福島を一瞥もすることなく、俺は歩みを再開する。



「うっさいバーカ!」



あんたなんて恐くないわよ。


無駄吠えする福島は俺の背中を罵倒する。いつか絶対謝らせる。
そう何度も何度も罵倒する。


何故か声は上擦っていた。


恐怖からなのかそれとも、別の感情の意があるのか、俺には理解が出来なかった。

他人はやっぱ理解が出来なかった。