そうこうしていると、講義が終わったのか、前方に座ってる学生が腰を上げ始めた。
俺も那智に『今終わったから』ってメールして、机上に散らかしている筆記用具等を片付ける。
講義室には優一や浩司がいるけど、前の方に座っているから俺の存在に気付いていない。
都合がいい。
絡まれないうちにさっさとずらかろう。
最近、俺が大学に来ていないから、あいつ等、今日も休みだって思ってるんだろうな。
それに―…、一目じゃ俺に気付かないんじゃないか。
髪、一変して金に染まってるしな。
那智と同じ髪の色だったのに…。
染めるのはめっちゃ嫌だったけど、でもこれから先を考えて、行動を起こしやすいように俺は身形を変えてみた。
イメチェンってヤツだな。
茶髪より金髪の方がイメチェンしたってカンジがするし、一目で俺って気付くのも少なくなるだろう。
那智は似合うって絶賛してくれた。
あいつが「カッコイイ」って喜んだから、まだイメチェンしても良かったって思うけど、やっぱ黒がいいな。
那智と同じ色にしてぇ。
さすがに那智を金髪にするわけにもいかねぇし。
はぁーあ、溜息をつきながら身支度をしていると俺の前に人の気配。
ヤーな予感がしてきたぞ、おい。
俺は敢えて顔を上げず、鞄のチャックを閉めることに専念。