【自宅の浴室にて】
(PM10:07)


「兄さまっ、兄さま? 治樹兄さま―――!」


湯船に浸かっていた俺の耳に飛び込んできたのは那智の声。

那智が寝ている間に飯食って、風呂に入っていた矢先、片割れが目を覚ましたようだ。狂ったように俺の名前を呼んでいる。


こりゃやばいな。


そう思って湯船から上がろうとした時、ドタドタドタッ―で足音、バンッ―で浴室の扉が開き、「兄さまみーっけ!」の、ドッボーン。


クソ狭い浴槽でダイブされた。


俺は当然風呂に入ってるから真っ裸だけど、寝起きの那智は寝巻き姿。
つまり服着たまんま風呂に入ってきやがった。


なんっちゅう入浴タイムだ。

いや、那智だから許すけど。



「なーち、風呂に入る時は真っ裸がルールだぞ。あ、てめぇ、何だその腕。自分で爪立てただろ? あれだけ駄目って…。

………。

あーあ、寝てやがる」



風呂にダイブするや、俺に抱き付いてくるや、那智は安心したようにスピーっと寝息を立てる。


目が覚めた時、俺がいなくて驚いたんだろうな。

びっくりプラス、寂しくて不安で恐くてあんなに探してたんだろうけど。

しかし入浴中の真っ裸の男に、手前は服着たまま入浴でおやすみなさいって。



「んと、兄さまにゾッコンだな。
兄さまが少しいないだけで、那智はこんなにも取り乱してくれる」



俺は満足気に笑って、水を吸って飽和状態になっているシャツに手を掛けた。

取り敢えず、着替えさせねぇとな。