「もっと…言ってくれ…那智」


懇願する情けない兄貴に、那智は綻んだ。


「何度でも…兄さま。大好きですよ、愛してます」


弱い俺は弟の溢れる愛情に咽び泣く。

ただ只管、自分の弱さを嘆いて、親父の放った無責任な言葉を呪って、弟の愛情に涙を流し続ける、続ける。続ける。



…タ…。

…ポタ…。



―…ポタ…。




その内、俺の手の甲に別の雫が落ちてくる。

顔を上げれば、雨模様顔の那智の姿。


「なんでっ…てめぇまで泣いてるんだよ」


引き攣る喉を無視して、俺は泣きながらも笑って見せた。

那智も笑い泣き。



「兄さまが…、泣いてるから…」



こっちまで涙が出てきた。
もらい泣きしたんだと、那智はクシャッと顔に皺を寄せて俺を抱き締めてきてくれる。

おかしい奴だな。

俺に暴力振られた時は大丈夫だって笑ってるくせに、俺が泣いたら…もらい泣きだなんて。


おかしくて優しい奴だよ、那智は。


ポロポロとホロホロと泣く那智は、

「泣かないで」

そう言って俺をキツク抱き締めてくる。


ホロホロとポロポロと泣く俺は、

「泣くなって」

そう言って那智を抱き締め返す。



そうやって俺等はお互いを慰め合う。

昔と変わらないやり方で、俺等はお互いの温もりを共有し合う。



完全な、ふたりぼっちの世界の中で俺達は孤独を拭い合う―――…。