佇んでると、那智が歩み寄って来た。

あんなに俺が暴力を振るったにも拘らず、那智は怖じることなく俺に触れてそのまま抱きついてくる。


瞬間、俺は那智の体を掻き抱いた。


そのままその場に崩れて、馬鹿みたいに「ごめん、ごめん、ごめんっ」謝罪する俺がいた。


「兄さま、ちゃんと温もってきました?」


とても冷たいですよ、俺の背中に手を回す那智は微苦笑を漏らす。

まるで俺の冷えた体に温もりを与えてくれるように、那智は俺の体と密着してくる。


「もー、兄さま。機嫌が悪かったからって部屋は散らかさないで下さいよ。後で一緒に片付けして下さいね」


温もりと優しさと変わらない態度が胸を打つ。


「那智っ…ごめん、ほんとごめん。見せてみろ、俺が傷つけた箇所。全部」

「うわっ、だ、大丈夫ですって!」


言われても説得力が無い。
俺は抱き締めている那智の体を解放して、無理やりシャツと下着を一緒に捲し上げる。

那智の体には俺と同じ生きた証の古い傷に痣。
その上から青々と華咲いてる痣が点々と、あちらこちらに…、あちらこちらに。


背中にも華が咲いてる…。

青い華が…。


通り魔に襲われた時の傷よりも、俺の傷付けた痣の方が目立ってる。


喧嘩慣れしてる俺が、加減なしに殴ったんだ。

喧嘩慣れしてない那智に、痛々しい痣ができて当然だろう。


「ごめ…、那智、ごめんっ。俺、おれ…、あいつ等と同じような事を」


自分のしでかした現実が重く圧し掛かってくる。

こんなことするつもり、毛頭もなかったのに。
頭に血が上ったばっかりに。


親父の言葉に惑わされたばっかりに。


謝罪しか言葉が出なくて、俺は何度も那智に謝る。