強い拒絶に親父は諦めたのか、「分かった」溜息まじりに返答。

俺を近くの駐車場まで誘導した。

二人きりで話したいから車内に来て欲しい、らしい。


聞かれちゃ不味い内容でも話すつもりか?


ま、俺等の虐待を見てみぬ振りをしてきた点を話すなら、人気の多い居酒屋やレストランじゃ無理だろうな。

俺は別段構わないが、親父がまっずーい立場に追いやられる可能性もあるし。


住宅街の中、こじんまりとした駐車場に辿り着く。

閑寂な空気を醸し出している駐車場の一角に親父の車が…、六人乗りの車はやけに上等なものに見えた。


これで愛するべき家族とドライブにでも行ってるんだろうか? 胸糞悪い。


舌を鳴らしながら俺は車の助手席に乗る。

親父は運転席に乗って、静かにドアを閉めた。

途中で買ったペットボトルを開けて、俺はサイダーで喉を潤す。

親父はエンジンを掛けて、軽く音楽をつけ始めた。


沈黙になった際、音楽で気を紛らわそうと思ってるんだろう。

名も知らないフォークソングが俺の鼓膜を振動した。


「お前は見れば分かるが、那智の方は元気か」


当たり障りの無い会話を切り出す親父。

癪に障ったけど、一々喰らい付くのも億劫。


「ああ」俺は素っ気無く返答した。


「そうか」相槌を打つ親父は一呼吸置いて俺に聞く。



那智は学校に行ってないだろ、と。



「芙美子(ふみこ)から連絡があってな。
那智が中学に行っていないという連絡が学校からきたらしい。
そう言って、こっちにも連絡が回ってきた。

だから少し…、その、あれだ。様子を聞きたかった」


芙美子は俺のお袋の名前だ。

俺はペットボトルを傾けてサイダーの炭酸と甘味を楽しむ。