襲われてからというもの、おれは一切学校に行かなくなった。


兄さまが暫くは外出禁止だって言うから。
どうしても外に出て行きたい時は兄さまと一緒じゃないと許可が下りない。

担任から学校に来ないかって電話があったけど、上手く事情も説明できなくて兄さまに適当な理由を付けて弁解してもらった。

自分のことなのに、自分で処理できないなんて情けないや。



おれが外に出られない一方、

兄さまは大学やバイトに行ったりするけど、顔はいつも険しい。

おれの身の上を心配してくれてるんだと思う。
兄さまはおれをひとりで家にいさせたくないみたい。

外出するここ四日、眉間に皺が寄ってる。


出掛ける際はいつもおれに声を掛けて、釘をしっかり刺してくる。


誰が来ても開けないこと。

誰が来ても、それは自分じゃないから安易に信用しないこと(兄さまは鍵を持っているから呼び鈴は鳴らさない)。


何かあったらメールをすること。
緊急の場合は電話をすること。

少しでも奇妙な事があったら遠慮せず連絡すること。


兄さまからメールや電話があったら直ぐに返すこと・出ること。


勝手に外を出歩かないこと。

これだけは絶対破って欲しくない注意事項だって、兄さまは言った。


おれはこれ等を忠実に守っている。

破ったってお互いにイイコト無いし、おれは兄さまをこれ以上心配させたくないんだ。

寧ろ、兄さまが心配でならない。


だって…犯人の目的、何だか兄さまっぽいから。


兄さまが帰って来ると、おれ、いつも「大丈夫ですか?」って飛びつく。

その度に兄さまは嬉しそうに笑って、


「兄さまは強いから」


おれの額を小突いてくる。