「…。」
「どうした?」
俺は不満だった。
「今こうしている間もこの国の兵士達は、前線で戦っている。」
グッと拳に力がはいる。
「俺は今日、すぐに援軍に出してもらえるのだと思った。やっと敵が討てるって…。」
握りしめた拳の痛みで自分を落ち着かせるかのように、強く強く拳を握りしめる。
「仕方ねえだろ?王の言葉がごもっとも。俺達の力が知りたいって言うんだ。存分に見せてやろうじゃないか。俺は逆に安心したよ。俺達はコマの一つや二つじゃねえんだなって。」
「そうかもしれないけど…。」
戦いたい。
暴れたい。
ずっと押し殺してきた感情を爆発させたい。
俺は…歪んでいるのか?

(強くなりなさい。)
あの時の王の言葉が頭に浮かんだ。
俺はあの頃とは違う。
今ならやれるのに。
〔過信。〕
フーッと深呼吸をして、自分の気持ちを落ち着かせる。切り替えなくては。実力を見てもらい、必ず前線に立つ部隊に入るんだ。
何度も何度も深い呼吸を繰り返した。

また時間となる。さきほどのメンバー、そして王。広場には城、王を守る兵士達が緊張感の糸を張り詰めながら、王の言葉を待っている。
もう緊張はしなかった。さきほどの不満を抑えるのに必死だったから、そんな事どうも感じない。
早く早く始めてほしい。
(オニキスだけ、顔が違うな…。)
王は感じていた。
「時間だ。では始めよう。ウラヌス、説明を。」
ハッと、ウラヌスと呼ばれた格の高そうな兵士が我々の前に立ち、敬礼をして対戦表を開いた。
「ルールを説明する。この対戦表通り今から対戦を始めるが、時間は一試合20分まで。その間に決着がつかない場合は引き分けとする。一応勝ち負けはつけるが、この場は自分の能力を王様に知っていただく場である事は忘れるな!」
ゴクっと誰かが唾を飲み込む音がする。