「シェリルか…こやつはなかなか使えるかもしれない。」
王は嬉しくなった。
(ちっ、先手に一発入れて終わりにするつもりだったから他に何も考えつかないな…どうしたものか…。)
考えたくても考えられる余裕を与えてくれない。俺はひたすら避けるばかりである。
「ベリル族の力まだまだこんなもんじゃないのよ。」
シェリルの目が、色をまた変える。スーツと今度は青い色に変わる。
「水泡(スイホウ)」
シェリルが振った杖から、無数の小さな泡がこちらに向かってきた。泡なので何も警戒せず避けてみたが、その泡は物に触れた瞬間、小さな爆弾のように弾けた。
「さすがベリル族だ。」
王の目が、若き少年のようにキラキラと輝いている。
「あれがベリル族の力…。僕達、魔法使いとは違い自然との契約により力を与えられ、呪文など唱えなくてもその能力を発揮できるという…。彼女は王にわかりやすいように名を言っているみたいですね。しかし、自然を愛し戦いを好まないベリル族が何故この場に…。」
魔法使い部隊の男も興味を持ち、二人の試合を見ている。
「水鉄砲(スイテツホウ)」
杖をこちらに向け、その杖先から勢いよく水が飛び出してきた。ずっと出っ放しの勢いある水。簡単に吹っ飛ばされてしまいそうだ。しかも、能力者が幅も操れるらしく、横に広がって広範囲を攻撃してきたり、一点集中で狙ってきたりする。広範囲になると勢いは衰えるが、一点集中すると勢いが増し、針のように鋭そうである。
相変わらず必死に逃げ回る俺。困った。対策が見つからない。相手は遠距離で攻撃してくる。近づきたいが、近づこうとしては魔法を変え、さっきみたいに行く手を阻まれてしまう。だけど、俺が持つ武器は剣だけだし…たとえば、これを投げたとしても当たれば儲けものだが、ハズレれば一貫の終わりだ。そんな無茶な賭けにでる訳にはいかない。だからといって俺は魔法を使える訳ではない。…困った。
相手の力を利用できないか?今、使ったのは水、火…特徴といえば目の色が変わる…美人…俺が持っているのは剣だけだし…。考えろ、考えろ俺。今まで十年間何をしてきたんだ!考えろ、考えろ!