「自分がどこまでやれるか知りたかった故。そうして旅をしていました所、募集のおふれをお見かけしました。」
タケシは王の方へ向きなおし、一礼をして答えた。背筋がまっすぐで、礼の仕方さえ美しかった。
(なんという技だろう?後で時間があったら聞こう。)
俺はものすごい興味をそそられた。敵討ちのためと、強さを追求してきた俺は、このタケシさんという方の言葉と技術に好感を持った。憧れか?
大男は痛みから解放され、グダっと倒れこんでいたが、先輩兵士達に引きずりどけられた。
「では次!」
次の対戦は、また肉体派同士の対戦であった。お互い初めての対戦なのだろう。お見合いが多い。威嚇しあっているというより、相手が手を出してくるのが怖いので受け身の態勢を取っているという印象で、見ていて面白くも何ともなかった。そしてそのまま終了時間。兵士が「情けない。」と、溜め息をもらした。
試合はどんどん進んでいく。見ていて、凄い!と思う人物がいたり、どうして志願したのだろうと思うような人がいたり…。だんだんと体がウズウズとしてきた。俺ならこうするのにって…。
「次、オニキス対シェリル!」
(…。シェリル?まさか…女…?)
俺は対戦の場まで歩き、ゆっくりとこちらに向かってくるシェリルと呼ばれた者の姿を見た。
サテンのスリットの大きい青いドレスを身に纏う、パーマがかった髪をハーフアップにした、杖を握る大人の魅力たっぷりな魔法使いであろう女性であった。
(女かよ…。)
正直、やりづらい。この女の人が討つべく相手なら、いくら女であろうと簡単に手を降しただろう。しかし、何も関係ない女、子供には手を出したくない。俺は武器に剣を持っている。剣でずっと修業してきた。今日は刃を向ける訳にはいかないから鞘に入れたまま、殴っていこうと思ってきたが、それは男だった場合である。女性相手に何発も殴りかかる訳にはいかない。困った。