皆が楽しくしてくれて、自分の周りが寂しくないのは、キャプテンにとっては幸せだった。
ずっと彼らといたいのに、それもあとわずかなのだろう。
この時間だけでも、大切にしなければならないのだろうというなら、自分もそれを楽しむ。
混ざろうと思って全員の腕を握った瞬間、やっとキャプテンは気付いた。
自分の体が、本当に消えそうなくらい、透けているということに、だ。
(待っ・・・!)
視界が呆けたように薄れる。
―――
心臓をバクバクさせながら、リクはゆっくりと自動販売機に向かうエリカを見つめた。
―なんであの子がここにいるんだ。
秋乃にジュマがどこに行ったか探してくるように言われてここに来たのに、なぜこんな所で出くわしてしまったのだろう。
恥ずかしくてまともに目を合わせられそうにも無い。
物陰に隠れて、彼女がどこかに行ってくれるのを祈るだけだった。
病院で会って以来、リクはエリカとあまり口を利いていない。いや、気まずくて話せなかった。
なので、なかなか話しにくい。
エリカの歩き出す音が聞こえ、やっとどこかに行ってくれる、とリクはホッとして道の角から出た。
その矢先、誰かと正面からぶつかってしまう。
「ひごっ」
「うっ」
何でまた、こういう時に君になるんだ。
本当に心臓のある部分を押さえそうになった。「痛」と言いながらエリカはよろめく。
「あっ・・・。先輩・・・」
(・・・くそっ)
会えて嬉しい気もあったが、会いたくない気持ちも勝ちそうな心情だった。