キャプテンにとっては、この会話を聞いているほうが面白く思える。
会った事のない2人が、あのように慣れたように話している姿は、見ていると幼さと可愛げがあった。

「横から入ってきたお前のほうが自己中だろうが」
「ソウイウノ、自己中ッテ言ワナイデショ」
「いきなり入ってきた奴が言うんじゃねぇよ。そこまでするほど好きなのかよ」
「私ハ、アンタヨリコノ子ガ好キデイル自信ガアルモノ。少ナクトモ、アンタヨリハ」

つい負けたくない気持ちを先んじてしまったせいか、ケイラはこの言葉で墓穴を掘ることになる。

「俺だって好きなんだっつうの」

少しして、ケイラは「あっ」と呟き、いかにも「しまったぁ」と後悔したそうに右手で目を覆う。ケイラにとっては、まさにひょうたんから駒というわけだ。

「今のは・・・その」

ケイラの様子は、キャプテンには「負けず嫌い」、つまり、シュンリに負けるものかと言うつもりで言ったのだというようにとらえられた。(本当は間違っている。)

ふと、キャプテンの視界に、陰に隠れてこちらの様子を覗うように見ている1人の少年の姿が映った。
可愛らしく、あどけない顔をした少年。
あ、ジュマがおる。キャプテンはジュマが何故隠れているのかに気付き、クスッと笑いそうになる。

きっと、ケイラやシュンリが気になって来られないのだろう。隠れさせるのも気の毒だったので、声に出して彼を呼ぶ。

「ジュマも、こっち来やーよ」

ケイラとシュンリは、ほぼ同時にジュマの方を向く。ジュマは跳ね上がり「何で今言うんですかぁ」と言いたそうな顔をする。手には自分で書いた物語なのだろう、十数枚の紙があった。

とぼとぼとこちらに来て「短編、作ってみたんですけど」と、蚊の鳴くような声で言う。

なぜ今日はこんなにも自分の周りに人が集まってきてくれるのだろう、とキャプテンは不思議でかつ愉快だった。

「キリちゃん!見つけた!」

遠くの方で声がする。