「お前さ、まだ付けてる?」
「付けとるって、何を」
「・・・ベルト」
「ベルト・・・。ああ、これね。付けとるよ」
灰色のベルトをかざすと、ケイラは安心したような表情になり、頬の力を抜く。
「正直さ、付けてないのかと思ってた」
「大丈夫やよ、気に入っとるし、いつも付けとるよ」
歯を出して笑ってやると、ケイラもまた笑い返す。
「やっぱ、お前といると楽しいわ」
「うちもさ、皆ともっとおりたいわ。じゃないと、つまらんもん」
だよな、と返すと、ケイラは麦茶を飲んで息をつく。仕草がいつもより落ち着いているようにも見えた。
すると、キャプテンの横でいきなりケイラの体が横にずれた。彼自身「うわっ」と声に出して横に倒れる。
「ドイテ、ドイテ」
「シュンリちゃん」
珍しくニット帽を浅く被っているシュンリは、いきなり来てケイラをキャプテンから引き剥がすと、自分がその場所に座る。
「どうしたの、シュンリちゃんまで」
「暇ダッタノヨ。コノ前ノ一件モアッテ、マスマスハマッチャッタカラ、会イタクナッテ」
はまったとは、まるで恋人同士のような言い方である。
キャプテンには、まるで先程のケイラの台詞をまる写ししたようにも聞こえた。
「お前何なんだよ」
「ン?」
引き剥がされたケイラは、ゆっくりと立ち上がってシュンリを見る。シュンリは「アラ、イタノ?」と忘れ去っていたかのように言う。
「勝手に忘れてんじゃねぇよ、人の会話に割り込みやがって」
「アンタ、ソノ時ハ麦茶飲ンデタジャナイ」
「会話の途中だったんだよ」
「ソウナノ?」
シュンリはキャプテンを見て言う。シュンリの腕は、まだキャプテンの左腕に絡みついたままだった。
「そこまで重要ではなかったけどなぁ・・・。シュンリちゃんの登場は予想外やったで」
「俺にとっては貴重な会話の時間なんだよ」
途中から強制的にケイラを引き剥がしたシュンリは、普通の表情で「アンタ自己中ネェ」と呟く。