・・・キャプテンSide・・・

下校途中、私はじっくりと「トリップ方法」の検索結果を書いたメモ帳を見る。

①『血で書いた五線星の中に入る』

②『月日、時間が全て同じ数になる時、白い服で白い壁にもたれかかる』

③『桜の木の下に立つ』

④『大きな天災が身近に降り注ぐ』

このいくつかの条件、どれも「近くに行きたい世界の構造」を示す物が必要だということが書かれていた。共通する点と言えばそれくらいだ。

まず、今回のトリップについて該当しないものは2つ。

①と③だ。①は人間が入れる大きさの五線星を書くには大量の血液が必要となる。そんなことできるはずがない。
③は、完璧に有り得そうにないというのが簡単な理由だ。そんなことがあったら、1人で花見に来ている人間は皆行方不明になるではないか。

そして、ありえそうなのが②と④だ。

偶然の産物と言えばよいのか、たまたまその日、その時刻に白い服で白い壁にもたれかかってしまい、その時に近くに小説があったのかもしれない。

④もそうだ。台風が岐阜に直撃したか、もしくは規模の小さい(もちろん、日本にとっては最高記録の)竜巻が起こった、などのことがあったのかもしれない。

「うーん、やっぱり記憶がないとよく分からん」

顎に手を当てて悩んでいると、後ろに人の気配を感じる。
後ろを向くと、あ、と相手が呟く声がする。と同時に、私は「うーっわ」と言いたくなった。

高木(先輩)だ。

何でこんな所でこいつと遭遇するんだろう。

また何か突っかかってくるな、こいつは。私は即座にそう予想した。

「じゃ、さようなら」

それだけ言って帰ろうとするが、案の定、相手に「待ってよ」と引き止められた。