『手を出すなっ!』

日本で最初に出来た知り合い。彼女を襲った複数の男に殴りかかった時に、私の口から出た言葉だった。
あの時の闘争心は、勇気だったのだろうか。それとも、ただの度胸だったのだろうか。

そして、心配して私が振り返ると、彼女は真っ青な顔をして私の手についた血を見て、さっさと逃げ出してしまった。走り出す前にこう言う。

『ひっ・・・ひどいよっ・・・』

ねぇ、教えて。一体何が酷かったの?

そう言ったのは、彼女が逃げていった数十秒後だった。言葉は当時まだ分からなかったが、彼女が怯えていることは完璧に伝わっていた。

私は、あなたが大切だった。
酷い事されないようにと思ったから、動いたというのに・・・。

「ソフトクリーム、いかがですか?」

屋台の店で聞こえる声。今の気持ちを消し去りたい一心でその屋台に向かった。チョコスプレーのかかったソフトクリームは、私にとっては「食べて気を紛らわす」方法に最適なほど、甘かった。