「っあ」

ぼうっとして歩いていたせいか、私は転びそうになる。ニット帽が取れてウェーブがかった髪の毛が露わになった。

急いで被り直して、再び道を歩き出す。

途中、ビルとビルの間にある暗い道で2人の男を見つけた。1人は何かを売りつけられている男、もう1人は、それを売りつけている男。

―なんだ、麻薬の密売か。

いや、あの光景は売っていると言うより、買わせている、と言う方が正しいのかもしれない。
ああやって売りつけられて中毒になった人間が、売りつけてきた人間を殺そうと依頼してくるのだろうな、と彼の未来の姿を頭に浮かべる。

罪のない人間が殺し屋に殺されるわけがない。大抵は人から恨みを買って殺される人間ばかりだ。
悪徳商法人、麻薬密売者、裏金を使って稼ぐ者、強盗殺人半、イジメを行っていた学生や、それを無視していた教師、怨恨などだ。
相手自身にその自覚が無いだけで、本当は恨まれる様な事はしていたに違いない。