「遠藤美喜の記憶は既に排除しましたし・・・仕事がなくなったんじゃ、そいつらも動かないんじゃないんですか?」
「・・・まぁ、そうだろうけど、あくまで正当なマフィアじゃない『崩れ』だから、躍起になって何するか分かったもんじゃないから、一応、目を光らせておいて」

椅子をキィと鳴らしながら、教師はパソコンのキーボードを打つ。

「野放しにしておいて誰かがまた殺されたら、こっちのメンツもたたないでしょ?」

俺の内側で、黒い煙が渦巻いた。ほら、人間って結局自分の事しか考えてない。

自分さえ・・・自分達さえ良ければいいんだろ?
そう言う理由で、俺を雇ったんだろ?
俺の正体を知ってるアンタらは・・・俺を軽蔑してるんだろ?
金を貰って、自分の体に傷を作って、手を血で汚す人間を。

安全な人間は・・・そんな俺達を見て笑ってるんだろ?

今まで見てきた人間、ほとんどそうだったから。
ほとんど―

「駒南君、聞いてる?」

教師の声で、俺は自分の世界から抜け出す。

「は・・・はい」
「今日伝えたかったのはこれだけだから」
「はい・・・」