「どうも」

職員室に入ると、軽く頭を下げて担当の教師と向かい合う。教師の手には、数枚の書類が握られていた。

「これ、今日見せようと思ってたの」

手渡されたその書類を見ると、そのうち二枚には2人の男の写真がある。顎鬚を生やした男と、サラリーマン風の男。

「殺し屋?」
「ううん。マフィア崩れで金を稼いでたって話」
「マフィア・・・」

そう聞いて、真っ先にピストルを思い浮かべる。殺し屋よりも、マフィアの方が銃が似合っているイメージがあった。
スパイ部類の職業と一戦した経験はなかったからだ。日本ではそういない。

「まさか、まだこの学校の誰かを狙ってる・・・と」
「分からない。ただ、今回の犯人の『遠藤(えんどう)美喜』があらかじめ雇ってたことが分かっただけ」

なんていう情報不足だ、と心で悪態をつく。
しかし、遠藤美喜の記憶はデパートに見張りに行った時に失わせた。もう戻ることはないだろう。

自分の地位に執着し、そのために人を殺そうとするとは。

女って怖い、それであって、人って醜い、と心からそう思う。