随分と濁った水槽を見ると、まるで人間の心の闇を映しているようで気持ち悪くなった。
いや、闇というより、悪心というべきだ。
綺麗な水に移し替えてやった所で、そそくさと職員室に向かう。職員室を思い浮かべると、必ず自分に傷が付くことを予想する。いつものことなので、ワンパターンというべきなのだが。
不意に、ある2人の人物の顔が思い浮かぶ。
1人は土岐。転んだ俺を起こしてくれた土岐の顔。
そしてもう1つは、俺の正体を知ってもなお、立場に関して偏見の目を向けない。それどころか、心配さえしてくれたある後輩の顔。
普段少しのことでは心が動じない俺が、不覚にも、彼女の前で微笑を見せた。俺が笑顔を見せることを許すのは、土岐と、仲間だけだというのに、だ。
何よりも、心配してもらえて・・・「嬉しい」と感じてしまったのが最も不覚だった。
守りの対象と仲良くするな。間違っても、心から大切と思うな。
それが自分の中のルール。別に守り屋全体の心得ではなく、自分への戒めだ。
大切に思えば思うほど、亡くした時の傷は大きい。