「何もそんなに慌てんくてもいいのに。」
「いや、慌てますよ普通は。」

剣道場を通過し、校門を出ると、帰り道が一緒の所まで二人で歩く。

「そういえば、ジュマってどこに住んどんの?」
「えっ?」

何やらジュマが迷っているかのようなそぶりを見せた。住所を教えることがそれほどいけないことなのだろうかと思いながらキャプテンはジュマを見る。
どうしようかと言うように目を泳がせ、頭を回転させた。
ジュマはいつも帰るときは『集いの場』に行かなくてはならない。
しかし、ここでそこに行っては必ずキャプテンに自分の仕事がばれる。
それだけは、どうしても避けて通りたい道だった。守り屋の仕事は、必ずキャプテンには秘密にするのだと決意したのだから。

しかし、逃げる口実が思い付かない。
頭をフル回転させていると、後ろから聞き覚えのある声がした。

「キリちゃーん」
「あっ、エリカちゃん!」

やっぱり、とジュマも振り向く。キャプテンは知らないが、エリカは一度『集いの場』に来たことがある。

その時に、同僚に守り屋のことをきつく釘を刺されていた少女だ。


「何やっとんの?」
「ああ、帰宅途中。」

そう言われてエリカはジュマを見る。そして、何やら思い出したような顔をした。
彼らの仕事の事を考えてくれたのか、エリカはこう言った。

「たしか、後輩の子」
「後輩?」
「うちの学校の先輩の、中学時代の後輩らしいよ。聞いた。」
「なんや、知っとるんか。」