部屋にこもった啓吾をひさしぶりに
バルコニー伝いに窓からはいった。


「啓吾・・・・。」


「んなとこから…入ってくんなよ。」


「だって…部屋ノックしたって
開けてくれないじゃん?」


啓吾は私に背を向けたまま無言になった。


「千沙さん…泣いてたよ。」


時間が流れる。


「そうしてそんなに変わろうとするの?
いいじゃん今までの啓吾で……。
家族でいいじゃん…。」


啓吾はそれでも無言


私は啓吾の背後に立った。


「いいじゃん……。
家族でいようよ。ここは啓吾の家で
パパとママと……
それから……妹で……。」



「ありがと朱奈。なんかさ
皮肉だよな。
兄妹なことですごく悲しい想いして
やっとのことで終わらせたのに…
俺らバカみたいだな。
そんなに真剣になるようなことじゃなかった。
あはは…あははは……。」


啓吾が笑った。


「バカだよな……
あんなに苦しんで…やっと先輩ならなんて
自分を認めさせたのに
そんな必要もなかったんだぜ…。
あったま悪いよな~」

啓吾の声が泣いている気がした。