この大会で啓吾の名前が
注目されるようになったのは
言うまでもないけど……

啓吾が注目されればされるほど
私たちは不安におののいた。


忙しかった夏休みも終わって
啓吾も部活に戻っていつもの毎日が
訪れた。


結局 勇樹は高校生活最後の大会には
間に合わず終わってしまった。


「ごめんね。」


「いいよ。俺も間に合うとは
思ってなかったから気持ちの準備が
できてたからさ。
また頑張るよ。大学行ったってサッカーは
できるから。」


勇樹の顔が悲しそうに見えて
思わず私は抱きしめる。


勇樹を知れば知るほど
イメージが変わっていく。
勇樹は強がってるだけで
本当は哀しい顔を隠している。



壊れそうな勇樹がここにいる。


「何?朱奈……。」


「ううん…。勇樹の心臓の音が
聞きたくなったから……。」


勇樹を悲しませること……


それは私が啓吾を求めていること


後めたさを隠しながら
私は勇樹と啓吾の間で揺れている。